高齢化社会において親族の介護は避けて通れないものになってきています。

急な病気や怪我によって、ある日突然介護が必要になることも。いつか訪れる時のために、事前に知っておきたい介護の基礎知識をご紹介します。

介護が必要になったらすべき5ステップ

家族に介護が必要になった時、どのような手続きが必要なのでしょうか。その流れとポイントを解説します。

役所・地域包括支援センター窓口へ相談

まず、介護が必要な方が住む市区町村の窓口に相談しましょう。

窓口に直接行く時間が取れない方は電話でも相談できます。

市区町村の役所には、「介護保険課」「高齢者支援課」「地域包括支援課」など名称に違いはありますが、介護全般を担当する部署があります。介護に関するさまざまな支援はもちろん、地域包括支援センターの案内などをしています。

地域包括支援センターは介護・医療・保健・福祉に関連する相談の窓口です。「介護予防ケアマネジメント」「総合相談」「包括的・継続的ケアマネジメント」「権利擁護」の4つの業務を行っているほか、介護保険の申請窓口でもあります。同じ市内でも、住所によって管轄の地域包括支援センターが違う場合があるので、先に役所に相談してみましょう。

要介護認定の申請

介護保険サービスを利用する場合、まず要介護認定の申請をする必要があります。

要介護認定とは、「介護保険サービス利用者がどれくらい介護が必要か」を判定するもので、この結果に応じて、対象者の介護保険給付や使えるサービスの種類が決まります。

申請は無料。判定は要支援1〜2・要介護1~5までの7段階に分かれています。

要介護認定の申請手続きをすると、市区町村から調査員が家庭訪問し、対象者の普段の様子や心身の状態を聞き取り調査します。訪問調査の結果と、主治医の意見書に基づき、介護認定審査会によって要介護度が判定されます。

判定結果は、要介護認定の申請日から30日以内に郵送で届きます。「認定通知書」と「被保険者証」が送られてくるので、認定通知書に書かれている要介護度を必ず確認しましょう。

ケアプランの作成

要介護認定の結果によって介護保険サービスの利用が可能になります。担当のケアマネージャーとどんな介護保険サービスを受けるかを相談しながら、ケアプランもしくは介護予防ケアプランを立てましょう。ケアプランの作成は無料です。

ケアマネージャーとは、居宅介護支援事業所に所属する介護支援専門員です。利用者本人や家族の要望、本人の心身状態に合わせてケアプランを作るプランナーといえる存在で、介護に対する不安や悩みを気軽に相談できます。

ケアマネージャーが、介護保険サービス利用の要望や生活の課題等のヒアリング面談を行い、「担当者会議」と呼ばれる会議を開きます。担当者会議では、関わる介護保険サービスの責任者、利用者本人、家族でサービス利用の事前打合せを行い、ケアプランの原案を作ります。ケアマネージャーが作成したケアプラン原案に本人と家族が同意すれば、正式なケアプランの完成です。

本人や家族が納得して満足できる介護ライフを送るためにも、疑問があったら質問し、自分たちの要望はしっかり伝えましょう。

介護保険サービスを選定

ケアプランが完成したら、ケアマネージャーにサービス利用開始の依頼をしましょう。ケアプランに基づいて、さまざまな介護保険サービスが利用できます。介護保険サービス利用料の1割が自己負担になり、特別養護老人ホーム等の施設介護サービスでは、居住費・食費なども自己負担となります。

介護保険サービスを利用し始めた後、利用者の心身の状況が変わった場合は、ケアマネージャーに相談しましょう。要介護判定の認定通知書は有効期限が原則6ヶ月となっていますが、大きな変化があった場合は、介護認定変更の申請ができます。これを要介護認定の「区分変更申請」と言います。

介護施設を選定

介護施設への入居を希望する方は、ケアマネジャーと相談しながら入居する施設を選びます。介護施設を選ぶ際には見学をし、サービス内容やかかる費用について事前に確認をしましょう。例えば、同じ「特別養護老人ホーム」でも、居室が4人部屋か1人部屋かによって、居住費が大きく変わってきます。

入所したい施設が決まったら、施設に連絡をして申込みます。施設によっては、本入居の前に3日~1週間程度の体験入居を受け付けている施設も。施設に入居したら、施設のケアマネージャーが担当になります。こちらも介護士や看護師、利用者本人や家族などが集まった担当者会議を行い、施設内でのケアプランを作成します。

介護施設の種類

介護施設にはさまざまな種類があります。入居した後に「暮らしにくいな……」と後悔することがないように事前の下調べが大事です。ケアマネージャーともよく相談しておきましょう。

主に要介護状態の方を対象とした施設

主に要介護状態の方を対象とした施設をまとめました。

特別養護老人ホームは入居条件が要介護3以上の方であるほか、介護療養型医療施設は主に要介護度の高い方が優先されるので、要介護度の低い方の入居は現実的に難しいです。一方で、民間施設は自立されている方でも入居できる場合が多いです。

主に自立状態の方を対象とした施設 

自立状態の方を対象とした施設です。民間施設であれば、上に紹介した介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームも対象なので、検討してみてはいかがでしょうか。

公的施設と民間施設の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

高齢者施設の種類についてはこちら

老老介護と認認介護とは

老老介護とは、65歳以上の高齢者が65歳以上の高齢者の介護をすることです。「高齢者が高齢のパートナーを介護する」「65歳以上の子がさらに高齢の親を介護する」などのケースがあります。

一般的には、高齢になるにつれ身体の自由がきかなくなるため、老老介護は介護者の負担が増えてしまいます。また、精神的な負担が大きなストレスになり、虐待行為に結びついてしまう場合も。

さらに老老介護の中には、認知症の要介護者を認知症の高齢者が介護する「認認介護」という場合があり、特に事故が起きやすい危険な状況です。自身が認知症であるという自覚のないままに介護を行っているケースもあります。

このように、老老介護や認認介護は介護者の負担が大きいだけでなく、危険な事故も起きやすいため、事前に介護保険サービスを利用できるようにしておくことが大切です。

まとめ

介護保険サービスに頼らずに、在宅で行う介護は負担が大きく、特に介護者が高齢者な場合は共倒れになってしまうこともあります。

いざ介護が必要になった時に焦らず手続きができるよう、流れを確認しておきましょう。

早めに介護保険サービスを利用し、介護者の心身の負担を減らすことが大切です。