高齢者向け施設は、入居者にとって第二の我が家となる場所です。運営主体や入居条件によってたくさんの種類があるので、悔いのないように選びたいですよね。今回は施設の種類と失敗しない選び方をご紹介します。

高齢者向け施設とは

高齢者向け施設にはさまざまな種類があり、名前も似ているので、わかりづらいですよね。それぞれの特徴を知って、入居者に合った施設を選びましょう。

大きく分けると「民間施設」と「公的施設」がある

高齢者向け施設は運営主体によって「民間施設」と「公的施設」の大きく2つに分けられます。それぞれ費用や入居待ちの期間に違いがあります。

次の章では、「民間施設」と「公的施設」の主な施設をいくつかピックアップしてご紹介します。ぜひ施設を選ぶ際の検討材料にしてくださいね。

民間施設

民間施設とは企業が運営する施設です。受け入れ対象が幅広く、要介護度認定の結果が「自立」から「要介護5」までの方が入居することができます。また、費用は公的施設よりかかる反面、一般的に入居待ちの期間が短いのが特徴です。

介護付有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームとは、都道府県の指定(認可)を受けた民間施設です。介護スタッフが24時間常駐し、掃除や洗濯など身の回りの世話や、食事や入浴、排せつなどの介助サービスが受けられます。

公的施設の特別養護老人ホームには「要介護3」以上でなければ入居できませんが、介護付き有料老人ホームでは「自立」や「要支援」の方でも入居できる施設が多いです。特別養護老人ホームの入居待ち期間中に、一時的に利用する方もいます。

民間企業が運営しているため、人員体制やサービスの内容、かかる費用などが施設によって大きく異なります。希望の施設がある場合はあらかじめ確認しておくといいでしょう。人気の施設は入居待ち期間が長くなるので、早めに調べておきたいですね。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料⽼⼈ホームはさまざまな⽣活援助、介護サービスを入居者の必要に応じて⾃由に組み合わせて利⽤できる施設です。費用は使うサービスに応じて変わります。

デイサービスや自宅で訪問介護を利用する場合と同じように、介護度や地域によって介護保険の支給上限額が決まっています。上限を超えた分の介護サービス費用は⾃⼰負担となるため、主に要介護度の低い方には使いやすい施設です。

受けたいサービスだけを利用でき、デイサービスや訪問介護など、入居前から使っていたサービスをそのまま継続して使えるメリットがあります。

グループホーム

介護保険で「要支援2」から「要介護5」までの認定を受けている65歳以上の認知症高齢者の方が利用できる施設です。地域密着型サービスのため、施設がある自治体に住民票を持っていなければ入居できません。

こちらは認知症高齢者を対象に、家庭的な環境で自立支援と精神的安定を図り、認知症の進行を遅らせることを目的とした施設です。介護サービスやリハビリテーション等を受けながら、料理や買い出し、掃除などの家事も介助を受けながら利用者で分担し、共同生活を送ります。

最大9人の生活空間を「1ユニット」とし、ひとつの施設に2ユニットまでしか設置できず、地域の方しか入居ができないため、入居待ちの時間は長くなる傾向にあります。

サービス付き高齢者住宅

サービス付き高齢者向け住宅とは、民間事業者によるバリアフリー対応の賃貸住宅のことです。介護の必要がない、比較的元気な高齢者のための施設で、「サ高住」や「サ付き」と略されることも。

日中は生活相談員が常駐し、安否確認と生活相談のサービスを受けることができます。入浴・排せつ・食事や清掃といったサービスはなく、介護が必要な場合は、訪問介護など外部の介護サービスと個別に契約する必要があります。一方で、自由度の高い生活を送れるのがポイント。

厚生労働省の定める「特定施設」の指定を受けている施設もあり、介護付き有料老人ホームと遜色ないサービスを受けられます。希望の施設がある場合はあらかじめ確認をしておくといいでしょう。

公的施設

公的施設とは社会福祉法人や自治体が運営する公共型の施設です。民間施設よりも費用が安価ですが、入居の待ち時間が長い傾向があります。たとえば、東京都における特別養護老人ホームの待機人数は2019年4月1日時点で2万9126人となっています。

▲出典:厚生労働省調べ

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは、家庭での生活が困難な方が入居できる老人ホームです。そのため、介護保険で「要介護3」以上の認定を受けている方が対象になります。「特養」と略称で呼ばれることが多いです。

一度入居すると高度な医療が必要にならない限り、基本的には最後まで入居できるため、終の棲家としての役割も担います。低価格で入浴・排せつ・食事といった介護サービスが受けられることで人気のため、入居待ち期間が長くなる傾向にあります。

有料老人ホームでは家具や寝具は持ち込みになりますが、「特養」では備品として設置されています。費用はユニット型個室や多床室など、部屋のタイプによって大きく異なります。プライベート空間の充実した個室は高額になりますが、比較的空いている場合が多いようです。

介護老人保健施設

介護老人保健施設は、「要介護1」以上の認定を受けている方が、在宅生活の復帰に向けたリハビリのために入居する施設です。長期の入院生活から自宅に戻る前など、3~6ヶ月程度の短期間利用が前提になっています。「老健」という略称で呼ばれます。

入浴・排せつ・食事といった介護サービスの提供もありますが、あくまでも在宅復帰が目的の施設です。機能訓練室の充実していて、作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーションが受けられます。

入居期間が限定されているため、公的施設の中では入居待ちの期間が短く、利用しやすいです。中には特別養護老人ホームの入居待ち期間に利用する方もいます。

介護療養型医療施設

介護療養型医療施設は、寝たきり状態の方をはじめ、要介護度が高い方を受け入れている施設です。主に医療法人によって運営されています。

老人ホームの中では医療が充実しているのが大きな特徴で、看護師の人員配置が他の施設より手厚く、「インスリン注射」「経管栄養」「痰の吸引」などの医療処置も対応しています。

介護保険で「要介護1」以上の認定を受けた方向けの施設ですが、常に医療ケアを必要としている方が優先して入居するため、実際は「要介護4~5」の方がほとんどのようです。

そのような特徴から、病院に併設されていることが多く、居室環境は多床室の比率が高め。イベントやレクリエーションは有料老人ホームや特養ほど充実していません。介護療養型医療施設は将来的に廃止される方針が国から出されており、2012年から新設が認められなくなったため、入居待ち期間は長めです。

ケアハウス

ケアハウスは、比較的安い料金で利用できる「軽費老人ホーム」の一種です。2008年から新設される軽費老人ホームはすべてケアハウスに統一されることになりました。一般型と介護型の2種類があり、一般型では独居生活に不安のある60歳以上の方を、介護型は「要介護度1」以上で65歳以上の高齢者を受け入れています。

一般的には食事の提供やレクリエーションなどの生活支援サービスを行いますが、介護サービスの提供はありません。介護度が3以上になると退去の必要があります。介護型では生活支援サービスに加え、入浴・排せつ・食事などの介護サービスが受けられます。

ケアハウスの利用料金は、本人もしくは扶養義務がある家族の世帯年収等によって減額措置があり、少ない金銭負担で生活支援や介護サービスを受けられます。しかし入居希望者数が多いため、入居待ち期間は長めです。

施設を選ぶ際に確認したい3ステップ

さまざまな種類がある高齢者施設。自分に合った施設をどうやって選んでいけば良いかわからないですよね。ここでは施設を選ぶ上で確認したい3つのステップをご紹介します。

介護度や必要としているサービスから入居する施設を選択してくださいね。

希望条件を整理する

「ほかの施設に入所するまでに一時的に過ごせればいいのか」「レクリエーションが充実した施設がいいのか」「高度な医療を受けたいのか」、リハビリの有無や予算など、希望条件によって求める施設は大きく違います。まずはこの記事を参考に、条件に合った施設の種類をチェックしましょう。

情報収集する

おなじ種類の施設でも、施設ごとに待機人数やサービスが違います。たとえば、特別養護老人ホームの中でも、1部屋あたりの人数や、レクリエーションの有無など、その施設ごとの特色があります。特に、有料老人ホームでは料金形態に大きく差があります。「特養だからここ」ではなく、情報を収集して、3~5ヶ所程度希望の施設を選んでおくといいでしょう。

見学する

情報収集をしたら実際に見学をしてみましょう。施設の雰囲気や職員の方の雰囲気、利用者の表情など、実際に見てみないとわからないことがたくさんあります。

特にケアハウスやサービス付き高齢者住宅の場合、他の利用者との相性は重要なポイントです。

まとめ

たくさんの種類がある高齢者向け施設ですが、希望条件を整理し、情報を集めて見学をすることで、目的に合う施設を選ぶことができます。家族と相談しながら「自分に合った」施設を選ぶようにしましょう。