事前に準備しておいたほうがよいこと

1.必要な資金の事前準備

死亡後、本人の預貯金が凍結されるので、葬儀に必要な資金(現金)の調達をしておく

2.本人の本籍

死亡届に記入する際に必要になるので、本人の正確な本籍地を把握しておく

3.葬儀のときの会葬者予想リスト

本人が親しくしていた人をリストアップ。危篤のときに連絡する人のリストを兼ねることもできる

4.菩提寺の電話番号

菩提寺がある場合は、死後すぐに葬儀の日取りを連絡できるように電話番号を控えておく

5.着せてあげたい死に装束

本人が気に入っていた洋服などがあれば、それを死に装束として用意

6.安置する場所

亡くなったあと、すぐに搬送して安置しておく場所を確保

葬儀社へ事前相談を

よい葬儀を行うために、もっとも大切なこと…それは「いかによい葬儀社を選ぶか」です。事前に調査をして情報を集め、しっかりと準備ができていればいいのですが、実際は家族の死が現状になるまで情報を集めようとしないのが現状です。

そのため、あわてて決めてしまい、「もっと○○してあげたかった」など、心残りのある葬儀になってしまうことも多いのです。

そこで、できればしておきたいのが「葬儀社への事前相談」。どこの葬儀社なら信用してまかせられるかを、数社で比較検討した上で、最終的に決めます。より具体的な内容は「葬儀社の選び方」で詳しく説明しています。

生前に遺影写真を撮っておく

遺影用写真を選び作業は、意外と遺族を悩ませるもの。生前に遺影用の写真を撮っておくのはいかがでしょうか。

葬儀社などで、遺影用写真撮影会なども行われているようです。プロのカメラマンが撮ってくれる写真は素人が撮ったものとは格段に違います。

いつ寿命を迎えるかわかりませんから、とびきりの一枚を遺影用写真として用意しておくことも良いでしょう。

エンディングノートに書いておくと便利な項目

①もしものときに必要な意思表示

・病名の告知や余命宣告をしてほしいか

・延命治療はしてほしいか(してほしいなら、どこまで希望するか)

・尊厳死を希望するかどうか

・献体登録をしているかどうか

・ドナーカードを持っているかどうか

・アイバンクに登録しているかどうか

②生きてるうちに家族に知っておいてほしいこと

・介護が必要になったときの希望

・介護に必要な費用について

・判断能力が低下したときの後見人について

・生前契約をしている葬儀社について

・互助会に入っているかどうか

・どんな葬儀をしてほしいか

・使ってほしい遺影用写真について

・葬儀費用について

・葬儀に来てほしい人

・お墓の希望

・死後の各手続きをしてくれる人について

・自分の経歴(どんな人生を歩んだかを簡略に)

③死亡後に見てほしいこと

・土地、家屋などの相続

・預貯金、株式、生命保険の分配について

・年金に関する書類の保管場所

・ローンの有無

・カードから引き落としされているもの

・クレジットカード、携帯電話、パソコン、インターネットなどの解約のための手続き情報

・パートナーや子どもたちへのメッセージ

・友人やお世話になったかたがたへのメッセージ

なかでも、次にあげる3つはぜひ書き残してほしいと思う項目です。

1.お葬式に呼んでほしい人

書いておかないと、周りの人は気づくことができません。自分が亡くなったことを知らせたいと思う人の名前と住所、連絡先を書いておきましょう。

2.自分が輝いていた時代のこと

学生時代のこと、就職してからのこと、結婚当時のこと、主婦になってからのこと、子育てを始めてからのこと…など、あなたが輝いていたときのことや心に残っていることを書き残しておきましょう。子どもがいる場合、子どもは物心がついてからの親の姿しかわかりませんから、親の青春時代、独身時代、新婚当時のころを知ることは意味のあること。親の人生に思いをはせることで、家族を亡くしたあとの心のケアにもつながります。

3.自分を支えてくれたかたがたへのお礼

自分の葬儀をイメージして、参列してくれた人たちにどんなお礼の言葉を残したいかを考えて、書いておきましょう。この言葉は、会葬令状に使ってもらってもいいし、喪主のあいさつで遺族から伝えてもらってもかまいません。あなた自身の言葉があることで、会葬者の心に深く響く葬儀になるでしょう。

エンディングノートについてはこちらもご参照下さい

自分の葬儀費用を準備するには

一般的な葬儀費用の相場は、約200万円といわれています。自分が死亡したとき、喪主になる人はその大金をすぐに用意できる状態でしょうか。

そんなニーズから最近登場したのが「葬儀保健」(各社で商品名はいろいろ)。手ごろな保険料で、加入者が亡くなった場合にすぐに保険金が支払われるというものです。このような保険に入っておくことも、遺族に対する思いやりかもしれません。

もう一つの方法は、少額短期保険に入り、保険金の受取人を喪主になるであろう人に指定しておくことです。

この保険は、請求してから当日または翌日には支払われているので、そのまま葬儀費用にあてられます。葬儀社に問い合わせてみましょう。

終末期から具体的に考える

場面を思い浮かべながらこの場合はどうしたいか、など、具体的に考えましょう。

最期は自宅で迎えたいとか、延命治療の可否または必要なときはどこまで希望するか、終末期にそばにいてほしい人は誰か、などを亡くなる前の終末期から考えます。葬儀は控えめにと思っても、

・どんな葬儀にしたいか

・具体的にどの範囲まで知らせ、列席してほしいか

・依頼したい宗教者は決まっているのか

・お墓はあるのか、新しく建てるのか、将来的にどうするのか
 ・遺産分けに希望や考えはあるのか

まずはじっくり考え、それを家族に伝えておけが安心です。

死は突然やってきます。直面するとだれもが放心状態になります。そうした精神状態で「葬儀」「相続」といった非日常的な儀礼や事務処理を行うことは大きなストレスになります。昔の大家族のように、相談できる人や、役割分担してくれる人が身近にいてくれるならよいのですが、核家族化している現代においては、それは稀なケースでしょう。もしものときに頼れる、よき相談相手、パートナーを見つけておくと良いでしょう。

菩提寺を確認しておこう

菩提寺とは、先祖代々おつきあいのあるお寺

お寺というと、葬儀の際にお経をあげてもらうだけというイメージがありますが、菩提寺と檀家の関係になると、年間行事(新年法要。盂蘭盆会、お施餓鬼絵など)に参加したり、悩みごとの相談にものってもらえます。

ただし、寺院維持のための寄付金(たとえば本堂改修費用)や、各行事ごとに多少のお布施を用意することになるでしょう。

新たに菩提寺を決める場合の注意点

自分の家に菩提寺があるのかないのかわからない場合は、両親や親戚に聞いてみるとよいでしょう。以前に身内の不幸があったなら、その記憶を辿るのも一つの方法です。

もし、これから菩提寺を探すという場合は注意点があります。菩提寺にお墓を建てるのは、家を建てるのと同じで、簡単に移設や乗り換えはできません。さらに、葬儀以外にも年間を通してのおつきあいが少なからず発生します。

菩提寺というものは、後世(子どもや孫の代)まで続くという性質があります。したがって、家族構成などの事情を踏まえながら、あわてず慎重に探しましょう。なお、菩提寺がなくとも、葬儀自体は問題なく行うことができます。

遺言書やエンディングノートを活用する

家族と話し合うことは、とても大切です。しかし、中には「縁起が悪い」「そんな悲しいことは話題にしたくない」と、正面切って話し合いができないこともあります。同じ言葉を聞いても一人ひとり受け止め方が微妙に違うこともあれば、記憶があいまいになってしまうこともあります。

そんなとき、形として残る記録があると助かります。葬儀の仕方などに親族の中で異を唱える人がいても、それを見せると説得しやすいものです。本人の遺志が最優先ですから、それがわかる形があると余計なトラブルも防ぐことができます。

遺産分割など、法的に効力を持ったほうがいいものは遺言書に残します。

そのほかさまざまな希望や備忘録的なことはエンディングノートを活用するといいでしょう。

エンディングノートは形式も書き方も決まりはありません。なんでも自由に書けます。普通のノートに書いてもいいのですが、市販や無料配布されているノートは、必要な項目にチェックや記入をしていけるので、大切なことがもれずに記録できます。エンディングノートの記入をきっかけに、家族との話し合いの糸口を見いだすこともあります。

遺言信託という選択肢

遺言信託が向いているケース

財産の内容が多岐にわたっていたり、事業継承するなど、被相続人だけでは遺言の内容をまとめきれない場合、相続人だけでは遺言の執行が難しい場合、「遺言信託」という選択肢があります。

遺言信託とは、遺言書の執行を信頼できる受託者(法人・個人)に話す方法です。金融機関は「遺言書(公正証書遺言)作成+保管+遺言執行」の3本立てのサービスとなります。

金融機関以外のサービスでは、委託契約+成年後見制度+遺言制度の3つを一つの信託契約で行うものがあります。つまり信託契約後、相続発生前の段階で認知症が発生しても、成年後見人制度が機能するので、包括財産管理ができるタイプです。このサービスは一部の弁護士・司法書士・行政書士などの士業で扱っています。

遺言信託のメリット・デメリット

遺言信託をひと言でいうと、「財産管理の一手法」です。

委託者が特定の目的(遺産の適正な管理、有効活用、円滑な承継など)のために、保有する不動産や預貯金などの資金を、信頼できる受託者に託し、その財産の管理・処分を任せる仕組みです。

メリットは、信託銀行などの組織に依頼するため、遺言書の管理や執行が何十年先になっても安心であることや、遺産運用の相談などができる点です。

デメリットは、子の認知や相続人の廃除などの身体に関する遺言は信託できないこと、手数料・遺言執行報酬など費用が高額なことです。また相続人の紛争に対する弁護士費用や、相続税申告などの税務に関する税理士費用は、別にかかります。

まとめ

家族と話し合うことはとても大切です。葬儀の仕方など、本人の遺志が最優先されますのでそれがわかるものを形として残る記録があると助かります。エンディングノートを活用したり、もしものときに頼れる、よき相談相手、パートナーを見つけておくと良いでしょう。