近年、ライフスタイルの多様化によってお墓選びが変わり始めています。従来の墓石スタイルだけではなく、樹木葬や合祀墓など新しい供養の形を選ぶ人も。今回の記事ではお墓の種類や、新しい供養の方法など、お墓に関する基礎知識をご紹介します。それぞれの特徴を知り、納得のいく選択をしましょう。

墓地・霊園・墓所の違い

  • 墓地:お墓が建てられている場所
  • 霊園:民間または自治体が運営している墓地全般
  • 墓所:お墓一つひとつの区画

お墓が建てられている場所は「墓地」とよばれ、都道府県知事の許可を得た場所が指定されています。

一方、墓地と混同しやすい名称として「霊園」がありますが、これは民間または自治体などが運営している墓地全般を指す言葉です。墓地のなかにはお寺が運営しているケースもありますが、このような寺院墓地の場合には一般的に霊園という言葉は使用されません。

また、これに加えて「墓所」という言葉も混同しやすい傾向があります。墓地のなかには家ごとにお墓の場所が区画で整理されていることが多いですが、この一つひとつの区画のことを墓所とよびます。

このように、お墓がある場所を指す言葉にもさまざまな種類があり、使うシーンによっては意味が通じないこともあります。お墓の基礎知識としてぜひ覚えておきましょう。

墓地の種類

墓地といってもさまざまな種類があり、運営している団体によっても特徴が異なります。今回は代表的な3つの種類に分け、それぞれの墓地にどのような特徴があるのかご紹介します。

寺院墓地

寺院墓地とはお寺に併設された墓地のことを指し、その多くがお寺の境内に設置されています。

寺院墓地には誰もが無条件にお墓を建てられるものではなく、そのお寺の檀家になることが条件となっているケースがほとんどです。そもそも檀家とは、定期的にお寺にお布施などを支払い経済的に支援する人のことを指します。その代わりに、たとえば家族や親族が亡くなった場合の法要について相談に乗ってもらえたり、優先的に法要のスケジュールを調整できたりとさまざまなメリットもあります。

先祖代々にわたって檀家としてお付き合いのあるお寺であれば安心ですが、お墓を建てるために初めて檀家になるには心理的・経済的なハードルも高く、躊躇してしまう人が多いのも確かです。

公営墓地

公営墓地とはその名の通り、自治体が運営している墓地のことを指します。公営墓地は寺院墓地に比べて費用を安く抑えられることが多く、経済的にお墓を建てられます。一方で、申込みの対象者も多く、抽選が行われる公営墓地もあります。

また、公営墓地という性質上、申込み条件に「当該地域に居住している人」といった条件が設定されているケースもあるため、事前に注意が必要です。

民営墓地

民営墓地は、民間で運営されている墓地を指します。民営ということもあり、快適にお墓参りができるよう独自の工夫が施されているケースが多いです。たとえば車椅子や足腰が弱い高齢者でも楽に移動できるバリアフリー設計や、広い駐車場などが完備されている点が挙げられます。

宗旨や宗派を問わず広く利用できるのも大きなメリットで、墓地がなかなか見つからず苦労している方は民営墓地を検討してみるのもおすすめです。

なお民営墓地は石材店などが管理しているケースが多く、お墓を建てる際には指定の石材店から墓石を購入することが条件となっていることもあります。

お墓の種類

墓地が決まったらどのようなお墓を建てるかを決めなければなりません。近年ではライフスタイルや家族のあり方も変わり、さまざまな種類のお墓が存在しています。

一般墓

一般墓は日本国内においてベーシックなお墓で、先祖代々にわたってご遺骨を埋葬するタイプのものです。どのような墓地であっても建てられるほか、一般墓を購入すれば子どもや孫の世代は墓石を購入する必要もなくなるため、長い目で見ると費用は安く抑えられます。ただし、一般墓は先祖代々にわたって引き継いでいくことが前提となるため、跡継ぎがいない場合は将来的にお墓の管理も難しくなります。

一般墓を購入する際には墓石そのものだけではなく、墓地の1区画(墓所)を購入する必要もあります。墓石工事費と墓所の永代使用料を合わせると、費用相場としては150〜300万円程度かかります。

永代供養墓

永代供養墓とは一般墓のように墓石を建てるタイプのお墓ではなく、納骨堂や樹木葬などの形態で管理者が定期的な法要などを行うものです。たとえば子どもがいない夫婦や配偶者がいない方など、一般墓の購入が難しい場合におすすめです。

「永代供養」という名称ではありますが、実際にはご遺骨の安置期間が定められており、20〜50年程度の契約期間が終了した後はご遺骨が合祀墓に移されて供養されることになります。

納骨堂

納骨堂はその名の通り、ご遺骨を安置しておくための屋内施設のことを指します。特にお墓を建てるスペースが確保できない都心部などにおいて増加傾向にあり、駅前など立地条件の良いところに建っているケースも多いです。

納骨堂にもさまざまな形態がありますが、なかでも典型的なのがコインロッカーのような小型の区画で管理するタイプ。その他、エレベーター式駐車場のようにご遺骨を運んでくれる機械式の納骨堂や、区画ごとに仏壇が設置されているタイプの納骨堂までさまざまなものがあります。

一般墓よりも費用が安く抑えられるメリットがありますが、納骨堂は永代供養墓の一種であるため、契約期間が終了すると他のご遺骨と一緒になり合祀墓へ埋葬されます。

合祀墓

合祀墓とは個別にご遺骨を管理する一般墓や納骨堂とは異なり、不特定多数のご遺骨とともに供養するお墓のことを指します。通常、一般墓や納骨堂の場合、ご遺骨の埋葬場所を変更する際にはご遺骨を取り出すことができますが、合祀墓となると他のご遺骨と区別がつかなくなってしまうため、一度合祀墓に埋葬してしまうと移動することができません。

他の埋葬方法に比べて圧倒的に費用が安いため、経済的な負担をかけたくない場合は合祀墓を選択するのもよいでしょう。

樹木葬

樹木葬は一般墓のように墓石を建てるのではなく、樹木や花のもとに埋葬する方法です。墓石を建てるよりもコストを安く抑えられます。しかし対応できる墓地が限られているうえに、子どもや孫の世代にわたって引き継いでいくことは難しいです。

お墓を選ぶ際に確認しておきたいこと

お墓は自分だけの問題ではなく、遺された家族の意向や希望も考慮したうえで検討しなければなりません。具体的にどのような点に注意すれば良いのか、4つのポイントに絞ってご紹介します。

立地や設備は整っているか?

お墓選びにおいてもっとも重要なのが、立地条件です。お墓が自宅から離れた場所にあると管理も難しく、お墓参りに出かける頻度も自然と少なくなってしまうでしょう。故人をいつでも身近に感じるためにも、立地は重要なポイントです。また、家族が高齢になったときのことを考えたとき、お墓参りがしやすい設備が整っていることも注意しておきたいポイントです。

予算や種類を家族と相談したか?

特に一般墓の場合、自分一人だけではなく、将来家族が亡くなったときにも同じお墓に入ることになります。そのため、家族と相談のうえで墓石のデザインや大きさ、墓所の広さなどを考慮する必要があります。

お墓がない、買えない場合はどうするか?

近所に墓地の空きがない、または公営墓地の抽選に漏れてしまいお墓を購入できない場合を想定し、事前に家族と対応を相談しておくことも重要です。一般的にお墓の確保が難しい場合、納骨堂を利用するケースが多いですが、契約期間や契約終了後にお墓を建てるのかについても決めておく必要があります。

個別安置の期間は?

納骨堂を利用する方のなかには、お墓が確保できるまで一時的に納骨堂へ預ける方も多く、契約期間や契約の条件などについても確認は必須です。長期的にご遺骨を安置する場合も、必ず契約期間は定めておく必要があり、また期間によっても費用は変わってきます。

お墓がいらない場合の遺骨はどうするの?

お墓にご遺骨を埋葬するのではなく、自分の遺骨を自然に還す「散骨」を選択する方も増えています。散骨の種類や注意点について解説します。

散骨の種類

散骨とは、主に海や山にご遺骨を撒いて埋葬する方法で、海の場合は「海洋散骨」、山の場合は「山林散骨」とよばれます。また、海の上空から散骨を行う「空中散骨」、そのはるか上の成層圏まで小型気球などによって上昇し散骨を行う「宇宙散骨」という方法もあります。

散骨の注意点

細かく砕いて粉末状にしたご遺骨を撒きますが、海や山であればどこに撒いても良いというわけではありません。

海の場合は沖合1.5km以上、山林の場合は所有者の許可を得たうえで人目につかない山奥の場所を探す必要があります。そのため個人で散骨を行うことは難しく、専門の業者に依頼するのが一般的です。

まとめ

ご遺骨を納める方法としては、これまでの一般的なお墓以外にもさまざまな供養の方法があります。自分自身の希望や予算を明確にしておくことはもちろんですが、何よりも大切な家族と相談しながら最適な方法を見つけましょう。