要介護認定の申請から利用開始までの流れ

①認定の申請

住んでいる市区町村の窓口に介護保険証を持参し、要介護認定の申請を行います。申請は原則として本人か家族が行いますが、代行申請の制度もあります。

②認定調査

認定調査員が自宅(入院中であれば病院)を訪問します。日時の問い合わせがあったら、家族が立ち会える日にしましょう。時間は1時間ほどで費用は無料です。お年寄りは調査員の質問に何でも「できます」と答えがちなので、正直に話してもらう必要があります。

③認定調査の特記事項

認定調査は、本人との面接にて行われるため、家族が本人の認知症に振り回されていたとしても、本人の目の前では言いにくいものです。また、本人も第三者の前では自分の不始末を認めたがりません。そのようなときは家族がメモを作っておいて調査員に渡す方法があります。見た目より悪化していることが担当者に理解してもらえれば、特記事項に記載されて2次判定の検討材料となる可能性があります。

④主治医意見書

もし複数の医師にかかっていたら、本人や家族のことをよく知り、家族が相談しやすい医師にすることが大切です。

⑤一次判定

認定調査の基本内容をコンピュータで判定します。ここで、非該当から要介護5までを振り分けた中間判定がでます。

⑥二次判定

保健、医療、福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」を開き、中間判定に検討を加えて最終結果をだします。ここで、認定調査の特定事項と主治医意見書が参考にされます。

⑦認定結果が届く

申請から30日以内(過ぎることもあります)に、郵送で通知が届きます。

⑧非該当になったら

介護保険サービスは受けられませんが、介護予防・日常生活支援総合事業への参加をすすめられることがあります。

⑨要支援になったら

介護予防サービスを受けられます。地域包括支援センターのケアマネジャーなどと一緒に、介護予防ケアプランをつくります。

⑩要介護になったら

介護サービスを受けられます。居宅サービスを受ける場合は、居宅介護支援事業所が窓口になります。そこでケアマネジャーを決め、ケアプランの作成へと進みます。

⑪ケアプランをつくる

ケアマネジャーと一緒につくります。本人や家族の要望が十分把握できなければ、どんなに経験豊かで優秀なケアマネジャーでもよいケアプランはつくれません。ケアマネジャー任せでは、双方が消化不良になるだけです。

⑫サービスの開始

それぞれの事業所と個別に利用契約を結ばなければなりません。煩雑なようですが、書類はすべて事業者が用意します。お互いが十分納得したうえで契約を結びましょう。

⑬もしも状態が変わったら

利用者の身体状態は変化しやすいものです。変化したら、要介護認定をやり直してもらえます。市区町村の窓口に「認定の変更」を申請するのが、やり直しの第一歩です。

⑭毎月の見直し

毎月、実施内容をケアマネジャーが確認に行き、希望があれば翌月の内容を変更します。

要介護認定の申請方法と代行申請の方法

市区町村の窓口か地域包括支援センターで

介護保険を利用するには、要介護認定・要支援認定を受けなければなりません。通常、住んでいる市区町村役所の窓口に本人や家族が出向いて申請を行います。役所の窓口に行く前に、申請書の他に持参するものがないか、事前に電話で問い合わせるのが一般的です。申請は地域包括支援センターで代行することもできます。被保険者から申請された市区町村は、30日以内に結果の通知を行います。

居宅介護支援事業所で代行してもらうことも

申請の代行は、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー事業所)に依頼することもでき、業務として「介護保険申請代行サービス」を行っている事業所もあります。しかし、ケアマネジャーによる代行申請を受け付けてもらえないケースもあるので、事前の確認が必要です。とはいえ、本人が入院している場合、自宅や施設から外出できない場合などは、代行申請が欠かせません。厚生労働省では、代行申請のできる居宅介護支援事業所、介護保険施設、地域包括支援センターなどを省令で定めているので、どこでできるかは役所でわかります。

主治医意見書の重要性と一次・二次判定のしくみ

認定審査に大きな影響を与える主治医意見書

申請書の主治医欄に名前を書いた医師には、市区町村から「主治医意見書」作成の依頼がいきます。主治医がいなければ、市区町村が指定した医師の診察を受けなければなりません。

主治医意見書は、認定調査の特記事項とともに、とても重要です。その後の二次判定でこの両者に特別な記載がなければ、家族に見えない疲労(認知症など)があっても、一次判定どおりの結果となってしまいます。主治医にはあらかじめ「意見書の依頼がいくのでよろしく」とお願いしておく方法もあります。

一次判定と二次判定はどのように行われるのか

一次判定は、認定調査員が確認した基本調査内容をコンピュータに入力し、全国一律の解析ソフトを用いて行われます。ここで、非該当、または要支援1~要介護5の仕分けが行われるわけですが、算出の基準は直接生活介助、間接生活介助、認知症の病状への対応、機能訓練関連行為、医療関連行為の5分野における手間(介護にかかる時間)です。

これは、病気や障害の重さとは関係ありません。身の回りの世話に時間のかかるほうが、単純に重度とされています。

一次判定はこうした機械的算出ですが、二次判定は介護認定審査会の委員で合議されます。その際、機械的に算出された手間より大変なのではないかという判断が働くのは、認定調査の特記事項か主治医意見書に具体的な記載がある場合です。そこに時間で算出できない手間の存在が記入され、それが委員間で合意された場合のみ、一次判定に変更が加えられます。

認定結果の通知

要介護度は介護にかかる時間によって決められる

市区町村は申請から30日をめどに認定結果の通知を行います。本人宛に郵送される通知書に非該当(自立)、要支援1、2、要介護1~5のどれかが記載されて届くのです。同封された被保険者証にも要介護度と有効期限が記載されているので、この段階でようやく介護保険が「使える保険証」となります。

要介護度別の状態の定義はありません。

要介護認定の有効期間は市区町村の判断で変更できる

要介護度は、一度通知されたらずっと続くものではありません。新規の認定結果は原則6ケ月で見直され、再度要介護認定を受ける必要があります。また、区分変更(有効期間中に要介護状態が変わって再認定の申請を行うこと)の有効期間も原則として6ケ月です。

それ以降の有効期間は原則12ケ月で、市区町村は3~24ケ月の範囲で短縮や延長ができることになっていました。その後、事務の煩雑さを解消する目的で有効期間の見直しが行われ、2018年度の改正介護保険から延長の最大が36カ月となりました。

まとめ

介護保険を利用するには、要介護認定・要支援認定を受けなければなりません。要介護認定の申請で重要なのは認定調査の特記事項と主治医意見書です。日頃の病院とのつきあい方も考え、本人や家族のことをよく知り、家族が相談しやすい医師をみつけましょう。